森林研究所における木材(建築材)研究の取り組み

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



【はじめに】

昨年度策定された「第2期岐阜県森林づくり基本計画(H24〜H28)」では、計画の目標数値として、木材生産量が50万m3(H28)、ぎふ性能表示材出荷量が5万m3(〃)と示され、県内の充実した森林資源を利用し品質の高い製材品を供給する体制を整備することが求められています。
 こうした状況の中、森林研究所では木材需要の大宗を占める建築用材の試験研究を十四年ぶりに再開することとしました。


【木材乾燥の研究課題】

住宅等に使用する構造用製材は建築工法の変化や法制度の改正により、乾燥材であることが求められています。
 木材乾燥に関しては、ここ10年の間に約120度で処理する高温乾燥法が普及・定着してきました。高温乾燥法では、製材の表面割れの低減や、乾燥工程の短縮が図られるといったメリットがある一方で、乾燥の仕方によっては、製材の内部に割れが発生する点、木材強度の低下が懸念される点などが明らかになってきました。 特にスギ材の場合は、原木1本毎に品質(特に初期含水率など)のバラツキがあり、仕上がり含水率を揃えることが難しいため、結果として内部割れが発生する要因となっています。
 そこで、乾燥が困難な含水率の高いスギに対して、それらに適した乾燥スケジュールや事前の選別を検討することで、全体として効率的な人工乾燥を行えることを目的として「スギ材乾燥の効率化に関する研究(H24〜26)」を開始しました。


【内部割れ材の曲げ試験結果から】

9月に開催された木材乾燥技術研修会(県木材協同組合連合会主催)で、乾燥による「内部割れ」が発生したスギ平角製材の曲げ試験を行いました。
 同程度のヤング係数の製材品で、内部割れの発生したものと通常の製材品との曲げ強度を比較する形で実施したところ、内部割れの発生した材の曲げ強度が10%程度低い結果となりました。
 今回は試験体の本数が少ないため、強度低下を一般的な傾向と結論づけることはできません。しかし、内部割れの発生した製材の含水率がいずれも10%程度と過乾燥気味であったことから、乾燥速度の遅い材に合わせて一度に乾燥させようとする工程に内部割れ発生の原因があると考えられました。

写真1 木材乾燥研修会の状況
写真1 木材乾燥研修会の状況

【今後の取り組み】

スギ材の乾燥速度の違いは密度(重量)等によって異なるとされています。乾燥時の初期条件を改善するため、今後は製材工場や原木市場等で簡易に選別できる指標となるデータの収集を進めていきます。
 また現在、(独)森林総合研究所ではスギ大径材からの製材に関する研究を本県内で実施しています。こちらの研究でも乾燥に伴う割れの発生は避けて通れない課題となっており、森林総研と連携をとりながら研究を進めます。

写真2 過乾燥による内部割れの状況

写真2 過乾燥による内部割れの状況
・木口から60pの断面
 ・強度低下が懸念される