作業道における表土ブロック積み工法の法面保護効果

(岐阜県森林研究所) 臼田 寿生



【はじめに】

作業道開設における表土ブロック積み工法は、開設時に掘削した表土や根株を盛土に活用することで、埋土種子の発芽や根株の萌芽による早期の植生回復と法面保護効果が期待できるとして、全国各地で普及が進められています。
 岐阜県においても各地で研修会が開催され、この工法を採用した作業道の開設事例が数多く見られるようになりました。しかし、表土ブロック積み工法による法面保護効果については、科学的に検証した事例がほとんどありません。
 そこで、表土ブロック積み工法で開設された作業道の盛土法面において、植生の回復および土壌侵食の追跡調査を実施し、表土ブロック積み工法の法面保護効果について、工法の習熟度との関係もあわせて検証しました。

  
図 表土ブロック積み工法(模式図)
図 表土ブロック積み工法(模式図)

【調査方法】

調査は2010年1月および3月に開設された作業道の盛土法面において実施しました。この作業道は表土ブロック積み工法の研修会で開設されたため、表土ブロック積み工法の講師が作設した「熟練者区」、研修の受講者が作設した「初心者区」さらには心土のみで盛土を作設した「対照区」の3つに区分することができました。

@ 被度調査
 「熟練者区」、「初心者区」および「対照区」の盛土法面に1m×1mの方形枠を設置し、枠内に発生した植生の被度を測定しました。方形枠は作業道開設直後の2010年4月に設置し、被度の観測を開始しました。

A 土壌侵食量調査
 作業道開設から1年2カ月後の2011年6月に被度調査用の方形枠の下部へ土砂受け箱(高さ15cm、幅25cm、奥行き20cm)を設置しました。土砂受け箱による捕捉物は、回収した後、乾燥重量を測定しました。なお、土壌侵食の強度は土砂移動レート(斜面幅1m降水量1mmあたりの土砂移動量gm-1mm-1)を用いて評価しました。


【結果】

作業道の開設から1年5ヶ月が経過した2011年9月における各工区の被度と約1ヶ月間の土砂移動レートは図-2のとおりです。
 被度については、表土ブロック積み工法で作設した熟練者区および初心者区が対照区と比較して大きくなりました。しかし、初心者区は熟練者区と比較して被度が低く、工法の習熟度の違いにより植生の回復に差が生ずる可能性が示唆されました。
 土砂移動レートついては、被度と負の相関の傾向が見られ、被度が60%を超えると土壌侵食が大幅に抑制されました。 以上の結果から、適切な方法で作設された表土ブロック積み工法は法面保護対策として有効であることが明らかになりました。しかし、適切な方法で作設されない場合には十分な法面保護効果が発揮されない可能性も示唆されました。このため、工法の採用にあたっては、見たままを真似るのではなく、工法の特性を理解したうえで適切な方法で作設しなければならないことに留意することが重要です。

  
各工区の土砂移動レートと被度
図 各工区の土砂移動レートと被度