エリンギ栽培におけるオカラと消石灰の増収効果

(岐阜県森林研究所) 水谷 和人



【はじめに】

県内では、平成22年に約4千9百トンの食用キノコが生産されており、県の重要な産業になっています。このほとんどは、菌床栽培によるものです。菌床栽培は、オガ粉に栄養材と水を混ぜたものをビンや袋に詰めて殺菌した後、キノコの菌を植え付けて育てる方法です。しかし、材料となる穀物価格や施設維持のための燃料価格が値上がりしているのに対して、キノコの市場単価は低下しており、経営は厳しくなっています。そこで、菌床栽培における収益性の向上を目的として、低コストな材料で発生量を増大させる効果の高い材料を探索しました。


【試験の取り組み】

エリンギの菌床栽培の流れを図−1に示しました。栄養材にはいろいろなものが使用されていますが、主なものは米ヌカやフスマです。ここでは、対照とする栄養材を米ヌカやフスマとし、その一部を乾燥オカラで置換したり、消石灰を菌床に添加して、添加条件や増収効果を調査しました。オカラと消石灰は、予備試験の段階でいくつかの材料を検討し、エリンギ栽培に増収効果があるとわかったからです。また、オカラは一部の生産者が既に使っていますが、適切な使用条件が明らかになっていないため、収量が最も多くなる使用条件を調べました。



【オカラと消石灰の効果】

栄養材に米ぬかやフスマを使用した場合に比較して、栄養材をオカラで置き換えることにより、いずれの割合でもキノコの収量が増えました(写真−1、図−1)。最も収量が多かったのは栄養材の75%をオカラで置き換えた場合で、1ビン当たり191gでした。対照のキノコの収量129gに比較して収量が48%増加しました。さらに消石灰を1ビン当たり1.2g加えると、対照と比較して収量が51%に増加しました。

図1 エリンギ菌床栽培の流れ
エリンギ栽培試験の流れ width=
  
写真オカラと消石灰の添加効果 図オカラと消石灰の添加効果
写真1 オカラと消石灰の添加効果 図2 オカラと消石灰の添加効果


【今後の取り組み】

オカラの増収効果は、条件を変えて培養期間を40日間に延ばしても同じ傾向を示しました。しかし、消石灰は収量が増加しなかった場合もありました。消石灰は、培養日数や材料の組み合わせによって効果に差があるようなので注意が必要です。  今後は、これらの成果を、県内のキノコ生産者に対して情報発信を進めるとともに、生産現場での実証試験にも取り組んでいきます。このような取り組みを通じて、キノコ菌床栽培の収益性を向上させて、県内キノコ産業の活性化が図れればと考えています。