廃菌床はシイタケ栽培に利用できるか(2)

(岐阜県森林研究所) 久田 善純


森林のたより684号では、シイタケの菌床栽培において、廃菌床を栽培に再利用することに、研究室内の試験として成功したことを紹介しました。今回は、県内の生産者が栽培に使い終わった廃菌床を入手し、より生産現場の施設に近い環境で再利用試験を行った結果を報告します。


【再利用試験の方法】

試験は、廃菌床を出した生産者の違いや再利用の割合、栽培するシイタケの品種の組み合わせによって10数種類の試験区で行いました。ここでは、そのうちの特徴的な2区を例に結果を紹介します。

まず、木材チップと米ヌカとフスマを材料とした菌床を作って対照区とし、これに対して木材チップの2割、4割(体積比)を飛騨地域の全面栽培方式の生産者の廃菌床で置き換えた区(廃菌床再利用区とする)を作成しました(それぞれ2割区、4割区とする)。これらを、野外に設置したパイプハウスの中に置いてシイタケの発生を管理し、収穫量などを比較しました。



【発生経過などに違いがあった】

廃菌床を利用した区(廃菌床再利用区)から発生したシイタケに外観上の品質の問題はありませんでした。しかし、その発生経過には特徴がありました。対照区は発生管理期間中の序盤から旺盛にシイタケが発生しましたが、廃菌床再利用区では序盤の発生量が少なく、中盤〜終盤にかけて発生量が多くなりました(図1)。最終的な発生量を比較すると、総重量では3区間に大きな差はありません(図2)が、総個数では廃菌床再利用区の個数が対照区よりも減少しました(図3)。その分、廃菌床再利用区のシイタケの傘のサイズは大きくなり、図2、図3のグラフにおいて、対照区と比較して傘の直径が4cm未満のサイズが減り、7cm以上のサイズが増えていることが分かります。

図1 シイタケの発生経過(積算重量の推移)
シイタケの発生経過(積算重量の推移) width=
  
シイタケの総重量 シイタケの総個数
図2 シイタケの総重量 図3 シイタケの総個数


【今後必要なことは】

以上のとおり、廃菌床の再利用により、シイタケの発生する時期、個数、サイズに影響があることが分かりました。これらのことは生産者の栽培、出荷の計画に影響することになります。また、ここに示す試験区以外の区では収穫量(総重量)が対照区より増加した区、減少した区があるなど、条件によって結果に差がありました。廃菌床再利用の実用化のためには、各生産者ごとの栽培方法や生産計画に合わせて、個々に最適な条件を探る必要があると考えられます。