野外でハタケシメジを栽培する

(岐阜県森林研究所) 水谷 和人



【ハタケシメジとは】

ハタケシメジは、畑や道端、庭先など、私たちの身近な所で発生している割にはあまり知られておらず、キノコ狩りの対象にもほとんどなっていません。
 しかし、大変おいしいキノコで、これからのキノコとして高い市場性が期待されています。施設栽培は一部で行われており、スーパーなどでも販売されています。生産量は年々増加していますが、施設栽培が難しいために生産量はまだ多くありません。


【野外でキノコを栽培する】

昨今、農産物直販所が増加し、自然栽培品に対する要求も手伝って野外栽培によるキノコの需要が高まっています。野外でのキノコ栽培は、初期投資が少なくて済み、複合作目としても期待できます。
 ここでは、ハタケシメジを対象に、大量生産ではなく、山林や畑など自然を利用して手間やコストをかけずに栽培することを目的に検討しました。


【異なる環境下で栽培を実施】

ハタケシメジは原木栽培ができないため、菌床を林床等に埋めてキノコを発生させる方法をとりました。
 市販の約3kgのハタケシメジ菌床(亀山1号)を購入し、平成19年9月6〜7日に野外に穴を掘って埋設し、土で埋め戻しました。埋設地は県内の3ヶ所で、標高750mと130mのスギ林、および標高110mの美濃市内の裸地です(図−1)。裸地のみ、直射日光を避けるために遮光率90%の寒冷紗で被陰しました。菌床を埋設した後、キノコの発生状況を3年間調査しました。

埋設地の概況
図-1 埋設地の概況


【キノコの発生について】

キノコは菌床を埋設して1ヶ月半経過した10月下旬から発生しました(写真−1)。
 調査を行った3年間の発生状況を図−2に示しました。埋設1年目の発生量は埋設地によって大きく異なり、美濃裸地が最も多く、美濃スギ林、郡上スギ林の順でした。この原因は埋設地の積算温度の影響と考えていますが、詳細は検討中です。2年目は春と秋に発生し、1年目の発生量が少ない場所で多く発生しました。3年目の発生はほとんどありませんでした。埋設地によって発生時期は異なりますが、3年間の総発生量は各埋設地で1菌床当たり595〜753gでした。
 その他には、降雨による土跳ねでキノコが汚れることを防ぐために寒冷紗などで覆うことが不可欠であることや、ハタケシメジは虫害を受けにくく、腐りにくいため、野外栽培に適したキノコであることがわかりました。

発生したハタケシメジ ハタケシメジの発生量
写真-1 発生したハタケシメジ 図-2 ハタケシメジの発生量

平成19年9月6〜7日に市販菌床を各10個埋設

発生量は菌床1個当たり


【これからの取り組み】

現在、当研究所が所有する野生株を使用して菌床を自家生産し、野外に埋設して栽培試験を実施しています。野生株の中には市販菌床の発生量に匹敵するものがあり、引き続き技術の改良を進めるとともに、実証試験を実施しています。