シデコブシの花を愛でられた天皇・皇后両陛下
全国植樹祭行幸啓にて

(岐阜県森林研究所) 中島 美幸



【全国植樹祭行幸啓】

2006年5月21日、下呂市萩原町で、第57回全国植樹祭が開催されたことは、皆さんの記憶にもまだ新しいことと思います。

植樹祭の式典後、四美の森に天皇・皇后両陛下をお迎えし、森林保全概要御説明が行われました。

当所は、平成13〜15年度に取り組んだシデコブシの研究について、両陛下に御説明するという大変貴重な機会を持つことができました。

【行幸啓に向けた準備】

行幸啓でシデコブシ研究の説明をすることが決まった昨年1月、当所では、両陛下に白とピンクのシデコブシの花をご覧頂くことにしました。

地元保存会の人たちの協力のもとで行った自生地調査では、シデコブシの開花時期は、多治見や土岐で4月上旬、瑞浪、恵那、中津川で4月中旬です。行幸啓当日の5月21日にシデコブシを開花させるための約1ヶ月の調整が必要でした。

当所の所長以下、職員全員で、シデコブシの開花時期を行幸啓当日に合わせるための検討を行うことになりました。

幸いにも、実生や挿し木、接ぎ木を通して苗木生産を展開している地元育成者の協力を得て、まだ蕾の固いシデコブシの鉢苗を白とピンク5本ずつ用意できました。

あらかじめ低温庫で休眠させておいた鉢苗を、行幸啓30日前、20日前、15日前、10日前、7日前に、それぞれ2本ずつ庫外に静置し、開花時期を調整していったのです。

そして、行幸啓当日には、白とピンクのシデコブシ各2本を満開の状態で用意することができました。

【行幸啓で頂いた両陛下のお言葉】

御説明場所に御到着された両陛下は、すぐにシデコブシの花にお気づきになられ、その美しさを讃えられました。

両陛下が特に御関心を示されたのは、白い花のシデコブシでした。両陛下は、皇居にもあるというピンク色のシデコブシをよく御存知のようでした。そのため、岐阜県の自生地では、花色や花弁数などが様々なシデコブシが見られることを申し上げました。

さらに、最大の自生地数を誇る東濃地域では、遺伝的に異なるグループに分かれていることからそれぞれの場所に応じた保全策が必要なこと、地元には複数のシデコブシ保存会があり、地域の人々によって保全活動が行われていることを御説明申し上げました。

両陛下は、このような説明を熱心に聞いて下さり、「研究を頑張って下さい。シデコブシは絶滅危惧種なので、これからも美しい花が咲きますよう、守っていって下さい」とのお言葉を賜りました。

【おわりに】

ある地元保存会の方は、植樹祭の翌日に掲載された新聞記事を見て、喜んでくださるとともに、その心情を著書に記されました。

「シデコブシを地域の中で見守ってきた私もまた励まされる思いだった」 (「シデコブシ先生」の植物日記 市川廣利著、文芸社)

現在も、自生地のシデコブシは、地元の方々によって守られながら、多彩な花々を咲かせています。