施設栽培に適したウスヒラタケの探索

(岐阜県森林科学研究所)水谷和人


【多様化する消費者ニーズ】

 スーパーマーケットの野菜売り場には、いろいろな種類のキノコが並んでいます。以前に比較すると、売り場面積は広くなり、キノコの種類も豊富になったと思います。これらはキノコ消費量の増加と消費者ニーズが多様化している現れでしょう。一方、生産者サイドでは珍しいキノコの人工栽培化を図り、新しい商品を市場へ送り込む開発競争が激しさを増しています。当所でも、新しいキノコの栽培化や、効率的な栽培技術の開発を進めており、今回はウスヒラタケの取り組みについて紹介します。

写真1 広葉樹の切り株に発生するウスヒラタケ
写真1 広葉樹の切り株に発生するウスヒラタケ
写真2 野生のウスヒラタケを栽培
写真2 野生のウスヒラタケを栽培

【ウスヒラタケとは】

 ウスヒラタケはヒラタケ科ヒラタケ属のキノコで、広葉樹の枯れ木や倒木などに折り重なって発生します(写真1)。ヒラタケに良く似ていますが、ヒラタケと比較すると小型で肉が薄いこと、梅雨時〜初秋の暖かい時期に発生するという違いがあります。

図1 ウスヒラタケ生産量の推移
図1 ウスヒラタケ生産量の推移

 平成16年の施設栽培による全国生産量は221トンです(図1)。エノキタケは11万3千トンですから、ウスヒラタケは生産量がまだ少ないマイナーなキノコと言えます。ウスヒラタケは害菌に弱く、収量が安定しにくい問題点があり、栽培が難しいキノコです。このことが、生産量の伸びない原因の一つと考えられます。岐阜県では平成8年から栽培が始まり、その生産量は数十トンで推移しています。平成14年までは全国生産量の多くを占めており、他県に比較して栽培実績のあるキノコです。

【施設栽培に適した菌株の探索】

表1 オガ粉培地における菌株別の栽培特性(一次発生)

 山で採取したウスヒラタケを栽培すると、発生するキノコは形や色が菌株によって様々でした(写真2)。また、菌の伸長速度なども大きく異なり(表1)、野生のウスヒラタケにはいろいろなタイプのものがあることがわかります。しかし、800mlのビンからの発生量は50g程度で(目標は100g程度)、生産者が使えるような菌株は現状では見つかっていません。しかし、菌株によって性質に差があることから、これらの交配を繰り返し、形が良く、収量が多い栽培に適した菌株の作出を目指して栽培試験を進めています。あわせて、今後は安定生産技術の開発、低コスト化の検討も進める必要があります。地道で時間のかかる作業ですが、近い将来には施設栽培に適した優秀なウスヒラタケをキノコ生産者に提供することが目標です。


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