菌床シイタケ栽培の敵
キノコバエを減らす方法

(岐阜県森林科学研究所)井戸好美


 本誌の2003年11月号に「シイタケ栽培の敵、キノコバエ」と題して菌床シイタケ栽培施設で多発するキノコバエ類の被害状況を紹介しました。その中で「被害の増加原因は、菌床上面からキノコを発生させる方法(以下、上面発生栽培)が増加したため、給水方法が浸水から散水や注水に変わったことなど栽培管理方法にある」と書きました。このため、キノコバエ発生を抑えるには上面発生栽培の給水方法を浸水処理にすることが解決策と考えました。しかし、菌床を水槽に沈める浸水処理法は、菌床の移動に手間がかかり、重労働です。

 そこで、上面発生栽培において菌床を栽培棚に置いたままで浸水効果が得られる新たな浸水処理法を開発し、キノコバエの防除効果を検討しましたので紹介します。

【新たな浸水処理法】

 上面発生栽培の新たな浸水処理法は、菌床を浸水槽まで移動することなく、栽培棚に置いたままで浸水効果が得られる方法です。

 手法は図1に示します。

図1 上面発生栽培での浸水処理方法
  1. シイタケ収穫後、菌床側面で折り曲げた栽培袋を上まで伸ばします。
  2. 栽培袋内に水を加えて菌床が水の中に沈んだ状態で20時間放置します。
  3. その後、注水した水をあけ出します。
  4. 伸ばした栽培袋を折り曲げて元に戻し、新しい水を加えて、シイタケの発生を待ちます。

【浸水処理法の効果】

図2 浸水処理後34日目のキノコバエ成虫数

 上面発生栽培の給水方法に新たな浸水処理法(以下、浸水区)と常法の散水処理法(以下、対照区)を行い、キノコバエの防除効果を比較しました。その結果、浸水処理後34日目のキノコバエ成虫数は、対照区では10菌床から計297頭羽化したのに対し、浸水区では71頭と少なくなり、防除効果が認められました(図2)。

 これは、菌床を水に浸水することで菌床上面もしくは側面に棲息するキノコバエの幼虫を死亡させるとともに、栽培袋内の水を新しい水と交換する際に幼虫を洗い流すことができたためと考えられます。


【浸水処理回数は?】

図3 浸水処理回数別のキノコバエ捕獲個体数

 それでは、この浸水処理法は何回行えば良いのでしょうか。浸水処理回数を2回、1回、0回(散水処理)として栽培を行い、キノコバエの防除効果を比較しました。その結果、キノコバエの捕獲個体数は、浸水処理回数を増やすと少なくなり、防除効果は高くなりました(図3)。

 これらのことから、上面発生栽培における浸水処理は、キノコバエ幼虫を駆除する効果が高く、キノコバエの発生密度を低下させる栽培技術と考えます。また、浸水処理回数は1回よりは2回行った方がキノコバエの成虫数を減らすことができます。

 今後は、菌床シイタケ生産者に対して、この情報を提供し、技術の普及に努めていきたいと考えています。



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