金物を使わない耐震軸組構法住宅
−新開発・木製筋かいプレート−


(林産研究部)富田 守泰


 地域性のある住宅造りを目指し、金物をできる限り使わない耐震接合法の開発を行なってきました。昨年7月号に引き続き、今回は新たに開発した木製筋かいプレートについて紹介します。

◆筋かい使用上の問題点
 地元に多い土壁造りではそのほとんどが筋かいで耐震対策を行っています。今回の阪神・淡路大震災ではその施工方法に問題を残しました。筋かいは突っかい棒でしか効かない。つまり圧縮でしか効かないとして、その端を無防備にも仮留め程度しかしていなかったことも問題となりました。

◆ 片筋かい耐力壁のウイークポイント
 現在一定規模以下の木造建築では構造計算をせずに耐力壁の壁量計算で建築確認が済まされています。計算に使用する壁率は、土壁で使用される片筋かいの場合、半間壁を対として一間とし、その傾きをハの字形にした試験結果から求めています。つまり試験壁を押したとき、押す方向に関係なく必ず一方で圧縮筋かいが働いている状態で、壁倍率という性能を測定しています。建築の構造計画で言うところの「つりあいよく筋かいを配置する」ことの一つはこれにあたります。ところが現場では、一間幅の壁を設けられる所はほんの僅かで、しかも同一壁線上に、それほど離れない間で筋かいを対に設定することも困難になっています。このような場合、筋かいが引き抜かれ倒壊に至った事例が見受けられます。(図1)


図1.壁倍率試験体と片筋かいの破壊形態

◆筋かい端部補助金具
 要は筋かいを圧縮筋かいだけでなく、引っ張り筋かいとして働かせるようにすることが必要となります。そのため筋かい端部を金物等で固定する方法が一般的となっています。現在では住木センター同等認定品として多くのメーカーから各種金物が市販されています。(図2)


図2.各種筋かい金物

 最近では大半の現場で筋かいプレートを使用していますが、大工さんの金物に対する抵抗感が未だあることは事実です。そこで考えたのが今回紹介する木製筋かいプレートです。

◆木製筋かいプレートとは
 提案する方法は、筋かいと柱、土台(梁、桁)間を構造用合板を介して固定する方法です。プレートを側面打ちとして外壁側に出すことは、化粧面や施工性、さらには長期的な耐候性に問題があります。そこで柱や土台の幅中央に溝を堀り、挿入する方法としました。また上棟した後からプレートを挿入でき、しかも引き抜かれないような形状としています。(図3)


図3.プレート挿入方法

 柱と土台間に溝加工が必要になりますが、現場ではプレートと筋かい間の固定だけとなりますので、柱や土台にも固定が必要な金物より、施工性が良くなります。溝加工についても、貫加工に使用している市販の傾斜型のチェーンのみで手軽に行えます。(図4)


図4.チェーンノミによる柱と土台の加工方法

 使用しているプレートは特類の構造用合板で、屋外の使用に耐える接着性能の高いものを使用しています。一枚の3×6構造用合板から30枚製造でき、金物(ビスタイプ)の実売り価格と同等程度の価格で提供できそうです。

◆耐力は壁倍率2倍の筋かい金物と同程度
 筋かいの引き抜き試験の結果を表に示します。木製プレートは全ての種類で2倍金物以上の結果となりました。また筋かいの傾斜が緩いとプレートの抜けの心配がありましたが、通常筋かいを使用する半間から1間までの使用方法では、別途に行った耐力壁で交互に加力した試験でも抜けることはありませんでした。

表.各種筋かいプレートの引き抜き試験(各種7個体による)
プレートの種類と筋かいとの緊結法
(土台ヒノキ、柱スギ、筋かいスギ)
短期許容応力度(kgf)
金属プレート(BP-2)
   〃  (BP-2同等ビスタイプ)
木製18mm厚プレート*ボルト2本留半間使用
    〃     *  〃   一間使用
木製15mm厚プレート*ビス7本留 半間使用
    〃     *  〃   一間使用
642
623
864
708
809
850
※ボルト12×105mm ビスは5.1×56mm使用    
 土台・柱断面120×120mm、筋かい断面105×45mm

◆住宅施工に向けて
 昨年7月号で試験した「込み栓」と今回紹介した「筋かいプレート」を実際の現場で施工してみました。住宅金融公庫では筋かい端部について、プレートや平金物と同等以上の緊結が保たれる方法を必要としており、強度面からも十分説明のできる施工方法となります。  今回は産直住宅会員の協力を得て恵那地方で施工していただきました。そこでの最大の問題点はプレートを挿入する溝の加工手間が別途必要となったことでした。しかし、すべて金物で留めるという短絡的な方法ではなく、木の性質を考慮し、工夫さえすれば身近な木材だけでも耐震施工ができることを実証しました。地域の工務店レベルでもできる耐震技術の手法として検討してみては如何でしょうか。詳細については県森林科学研究所まで。


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