「高性能林業機械の作業システム」研究の紹介


(森林科学研究所)中島 博


写真.タワーヤーダ(右)とグラップル(左)

☆はじめに
 近年、高性能林業機械の性能が再認識され、講習会や講演会などで紹介されることが、多くなってきました。
 高性能林業機械と呼ばれる機械が、我が国に登場したのは、昭和63年です。この時は、わずか23台でした。しかし、その後増加し、平成8年度には、1,478台に達しています。岐阜県では、やや遅れて導入が始まり、平成8年度に、24台(表1参照)になっています。

表1.高性能林業機械保有状況(林野庁資料)

 林業機械化の利点としては、
  (1)林業労働への魅力、
  (2)安全性の向上、
  (3)生産コストの低減、など。
 逆に問題点として、
  (1)大型・高価格、
  (2)走行性、
  (3)林地撹乱、
などがあり、この機械を効率的に使うには、林道などの路網を、整備することが必要です。
 林業センター(平成10年4月から森林科学研究所に名称変更)では、平成9年度から高性能林業機械をより効率的に使う作業システムについて、研究を行っていますので、その概要を紹介します。

☆研究概要
 この研究の目的は、高性能林業機械の性能を十分に発揮させて、伐採・搬出等の作業を、より効率的に行うことです。
 特に、森林の地形条件を考慮に入れ、高性能林業機械による効果的な間伐作業を開発し、あわせて森林の保全を考慮した作業システムを解明することです。
 研究項目は、林業機械による作業システムを究明するための基礎資料を得るため、実態調査を行い、さらに高性能林業機械に適した森林施業を開発するための現地調査を行っています。
 実態調査では、路網、伐採区域、作業ポイントの三つの観点から、地形条件の違いによる機械の選択、搬出経路などを、調査しています。
 また、現地調査では、間伐方法や集材方法等の違いによる生産性、作業による立木の損傷や林地撹乱などの森林への影響を調査し、さらに残存木の生長や森林環境の変化などを継続調査しています。

☆初年度の研究から
 この研究は始めたばかりですが、今回は、初年度の現地調査の概要を報告します。
(試験地概要)
 試験地は、大野郡清見村坂下地内で、利用間伐が行われている県行造林地の一部で実施しました。 調査地の概要は、表2のとおりです。林令40年生のスギを主体とする人工林で、斜面の平均傾斜は、38度でした。ここにタワーヤーダで、伐採方式の違いによる集材作業、特に架線からの横取り作業を把握するため、20m×20mの定性間伐(普通の間伐)区と列状間伐区を設置しました。

表2.調査区の概況

(調査作業方法)
 機械は、ランニングスカイライン式タワーヤーダと、プロセッサで、タワーヤーダの機種は、リョウシンタワーヤーダです。
間伐区内の伐採木をタワーヤーダで集材し、プロセッサで枝払い・造材した作業の功程と、伐採前後の森林環境などについて、調査しました。
(調査結果)
 今回は、タワーヤーダによる集材功程を、表3に示しました。

表3.タワーヤーダ集材の概況

架線は、定性間伐区、列状間伐区の下方に平行になるよう設置し、横取り集材を調査しました。
 作業能率は、架線による距離の違いを補正するため、搬器の空走行、実走行時間を除いて算出しましたが、ほとんど相違がありませんでした。出材量、荷掛け手の移動時間などによると思われます。 しかし、横取り速度は、定性間伐区0.39m/秒、列状間伐区0.55m/秒となり、列状伐採の優位性がうかがえました。
 列状伐採による間伐については、県内では、あまり行われていません。列状伐採は、列状に同じ方向に伐採するため、定性間伐に比べ、掛り木にならず、また立木の伐採されたところを通って、運材しますから、集材作業も容易です。
 今後も、このような伐採方式の違いによる集材方法などについて、調査地を別に設けて検討します。
 また、今回は得られませんでしたが、この調査地につきましては、森林環境の変化などを継続調査していく予定です。

☆おわりに
 最後になりましたが、調査地の設定に際し、高山山林事業所、清見村森林組合には、大変ご協力をいただきましたので、厚くお礼申し上げます。


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