列状間伐で効率作業
−スイングヤーダを使って−

(森林科学研究所)古川邦明


☆はじめに
 タワーヤーダが県内に初めて導入されてから10年以上経ちました。架線集材の機械であり従来の作業方法に組み入れ易かったこともあって、県内にも多く導入されています。
 しかし、タワーヤーダの特性を理解し、それを生かした作業が行われないため、従来より生産性が落ちてしまうような事例も見受けらます。
 そこで、森林科学研究所では、タワーヤーダ作業に適した施業方法を明らかにし、より効率的な間伐集材を行うための調査研究を平成9年度から行っています。昨年はこの一環で行った魚骨状間伐の調査結果を報告しましたが、今回スイング式タワーヤーダ(スイングヤーダ)による列状間伐作業を調査しましたので、その結果について報告します。

☆調査対象作業
 調査はスギ人工林内に0.88haの試験区を設定して実施しました。平均斜度21度、平均胸高直径27cm、平均樹高16.5mです。ここを一伐三残で列状間伐を6列実施し、上げ荷の全木集材の作業功程を調査しました。また、比較のため定性間伐も同時に調査しました(図1)。
 調査に使用したスイングヤーダは高鷲村森林組合所有のコマツHC30です。バックホーをベースにした機種ですが、このタイプのスイングヤーダは索張りが簡易なこと、ヘッドの付け替えでグラップルあるいは土木作業用としても使えることから、最近各地で導入が進んでいます。
 作業は高鷲村森林組合作業班の二名一組で、伐採から集材まで行いました。

☆調査結果
1.作業性
 調査結果を図2に示します。伐採から集材までの全作業功程は、列状間伐区が9.39m3/人日、定性間伐区が7.87m3/人日で、列状区が定性区に対して20%程良い結果となりました。作業別に功程を比較しますと、伐採、集材とも列状間伐が定性間伐に対して、伐採で約9%(1.59m3/人日)、集材で約29%(3.90m3/人日)、それぞれ良い結果となっています。
 また、一連の作業の中で架設撤去に要した時間は、一線平均14分程でした。タワー固定式の小型タワーヤーダを調査した際には、同条件で架設撤去に30分以上要しており、スイングヤーダは架設撤去時の作業性が優れていることが判ります。

2.森林への影響
 間伐材の集材搬出作業において残木の損傷はある程度やむを得ない面もあります。しかし、材面まで達するような傷は腐れや変色を招き、材の価値が低下しますから極力さけねばなりません。また簡易架線集材では通常材を鼻上げしての地曳きとなりますから、架線下の林床を撹乱し、その程度によっては土砂流出等も懸念されます。そこで作業方法の違いによる森林への影響度についても調査しました。
 残存木への損傷発生状況は、列状間伐で55本を搬出する間に3本、定性間伐で20本を搬出する間に10本でした。このうち材まで達するような損傷は、列状間伐で一本、定性間伐で6本でした。また、林床の撹乱も列状間伐区が7ヶ所、面積で7.28m2、定性間伐区が17ヶ所、面積で38.23m2発生しましたが、両区とも重度なものはありませんでした。これら材や林床への損傷は、ほとんどが横取りの過程で発生しています。

☆まとめ
 今回はスイングヤーダによる列状間伐と定性間伐を比較調査した結果を報告しましたが、他の簡易架線式小型タワーヤーダの調査でも同様な報告がなされています。スイングヤーダを始めとする小型タワーヤーダによる間伐作業では、作業効率だけでなく、森林への影響度の点からも、列状間伐による全木集材が適していると考えます。
 しかし、列状間伐は間伐効果が劣り、幹が偏った成長をするのではないか、さらには倒木等気象害が発生し易くなると言ったことが心配されます。この点については、各地でカラマツやスギの列状間伐の調査が行われ報告されています。これらによれば枝張りに偏りは生じますが、幹の形状や林分全体の成長量、及び気象害についても、定性間伐と比較して大きな差は無いとしています。
 森林研ではこの点についても現在調査を行っていますので、この調査結果が出ましたらまた報告したいと思います。


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