早生樹を知っていますか

(岐阜県森林研究所) 大洞 智宏



はじめに

最近、「早生樹」が林業関連の雑誌などで頻繁に取り上げられています。また、関連のシンポジウムなどが開催されており、早生樹への関心が高まっているようです。

 

早生樹とは?

早生樹とはどのようなものなのでしょうか。近畿中国森林管理局のホームページには、『書いて字のごとく、「早く」「成長する」「樹種」の総称です。一般的には、スギやヒノキに比べて初期の樹高成長量や伐期までの材積成長量が大きな樹種を指します。 10年から25年くらいの比較的短伐期での収穫が可能で、センダン・ユリノキ・チャンチンモドキ・コウヨウザン等の種類があります』と記載されています。

なぜ、いま早生樹?

過去に植えられたものが実際に大きくなり成長過程が明らかになりつつあることや、今後、主伐・再造林が拡大することが想定されているため、スギ、ヒノキ以外の植生樹種の選択肢として早生樹に期待が寄せられるようになりました。 また、成長がいいことから、下刈り省略などによる保育作業のコスト削減やバイオマスとしての利用にも期待されています。

コウヨウザン

現在、注目されている早生樹で建築用材として利用可能な樹種がコウヨウザン(写真―1、2)です。
 コウヨウザンは漢字で広葉杉と書き、中国・台湾原産の針葉樹です。中国では古くから建築用材として植林されており、日本には江戸時代以前に伝わっていたようです。広島県などでは過去に植林されているものが成林しており、その実績を基に植林が推進されています。 しかし、岐阜県内では、林として存在している事例はなく、単木的に寺社等で見ることができる程度です。
コウヨウザンの大きな特徴は、萌芽性が高いことです。このことによって、伐採しても切り株から新たな幹が伸び、再生するため、再度植林する手間を省略できる可能性があります。実際に四国の国有林では、萌芽した幹の平均樹高が10mを超え、森林が再生しています。

    
写真-1 コウヨウザン 写真-2 コウヨウザン葉
写真-1 コウヨウザン 写真-2 コウヨウザン葉

適地適木の見極めが重要

(国研)森林総合研究所の調査によれば、暖温帯と呼ばれる比較的暖かい地域がコウヨウザンの生育に適するとされています。したがって、岐阜県では県の南部が気候的な生育適地と考えられます。(図―1)
 様々な利点が挙げられている早生樹ですが、どこでもその成長のポテンシャルを発揮できるわけではありません。やはり、古くから言われているような「適地適木」の原則を守ることが重要になります。おそらく、早生樹といってもやせた土地では十分な成長は望めないため、実際に植える際には、適地をしっかりと見定めなければなりません。
 このため、森林研究所では、最近植栽されたコウヨウザンの成長量調査や過去に植えられすでに大きくなったものの調査を実施しています。この結果を分析し、成長のポテンシャルや、植栽適地の条件について明らかにしていきます。

        
図-1 コウヨウザンの生育に適した気候の地域
図-1 コウヨウザンの生育に適した気候の地域