スギ・ヒノキの大害虫カメムシ

(岐阜県森林研究所) 片桐 奈々



採種園と現場の問題

採種園とは、遺伝的に優れた特性などを持つ造林木の種子を多量に生産するための樹木園です。採種園で生産された種子は、苗木生産者へ供給されます。 採種園では多くの場合、主にスギやヒノキの種子を生産しています(図1)。しかし、どの採種園でも管理者の頭を悩ませている問題があります。それが、スギ・ヒノキの球果を加害し、種子の発芽率を著しく低下させる害虫カメムシです。

      
図1 ヒノキ採種木に実る球果
図1 ヒノキ採種木に実る球果

採種園の大害虫カメムシ

採種木は、植物ホルモン処理による着花促進が行われるため、通常より鈴なりに実をつけます。餌が豊富な採種園は、カメムシ等にとって格好の繁殖場所です。カメムシは球果にストロー状の口を刺し、種子の胚を吸います。そのため、ひどい場合には発芽率が10%以下まで低下します。
 スギ・ヒノキの球果を食害するカメムシは複数種類存在しますが、全国的に(岐阜県でも)最も問題となっているのは、チャバネアオカメムシです(図2)。成虫の体は黄緑色で翅が茶色く、大きさは1cm程度です。成虫と幼虫がともに球果を加害します。

図2 ヒノキ採種木に産卵するチャバネアオカメムシ
図2 ヒノキ採種木に産卵するチャバネアオカメムシ

防除の方法

カメムシの被害対策として、現在のところ、虫が入れない網目サイズのネットで球果のついた枝を覆う方法が主に行われています。
  岐阜県では、5月上旬頃に周囲から越冬した成虫が飛んできて、8月に最も多くなります(図3)。5月上旬には、球果がふくらみ始めているため、遅くとも5月には防虫ネットをかぶせる必要があります。
  しかしこの方法には、労力がかなりかかること、高さ4〜5mの採種木への設置には作業員の危険が伴うことなどの問題点があります。森林研究所では現在、これらの点を克服した防除方法の考案に取り組んでいます。
図3 白鳥林木育種場におけるチャバネアオカメムシの個体数変動(2018年)
図3 白鳥林木育種場におけるチャバネアオカメムシの個体数変動(2018年)
※個体数は、叩き落とし法により球果のついた枝9本(採種木3本×枝3本)から採集した合計頭数