冠雪害の危険度を把握する取組みについて

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



森林の気象害のひとつに「冠雪害」があります。これは、枝葉に付着した雪(冠雪)の重みによって、幹が折れたり、根ごと倒れたりする被害です。岐阜県内では、平成14年1月の大雪による被害をはじめ、今までに何度も発生し、林業経営上の損失や、倒木による交通への影響等がありました。この被害を減らすためには、冠雪害発生リスクの高い場所を知り、それに対応した森林づくりを進める必要があります。そこで、森林研究所では、気象条件や林分の状態から危険度を把握する取組みを行っています。


【気象条件から危険度を把握する】

冠雪害と気象との関係については、様々な機関で研究されています。当所では、それらの報告を参考にしながら、冠雪害の危険度を地域ごとに地図上に表すことに取り組んでいます。

危険度は、「冠雪害が発生しやすい気象条件の日」が過去に何回あったのか、地域ごとに推計、集計し、ランク分けすることで表しています。

平成18年度には、過去15冬期分のメッシュ気象値(約1km四方のメッシュごとの気温や降水量を整理したもの)を用いて「スギ人工林における冠雪害危険度図」を作成しました(『ぎふ・ふぉれナビ』(http://www.pref.gifu.lg.jp./sangyo/shinrin/shinrin-keikaku/11511/index_9948.html)に掲載中)。

現在、メッシュ気象値の最新の成果(農研機構メッシュ農業気象データ等)が新たに公表されたことを機に、最近年までの30冬期分の気象値を用いて、冠雪害危険度図の再作成に取り組んでいるところです(図)。同図については、危険度の過大評価、過小評価がないよう計算方法等の見直し作業を行っている最中であり暫定的な結果ではありますが、県の南西部から中央部にかけて特に冠雪害の危険度が高いことが示されています。

【林分の状態から危険度を把握する】

針葉樹人工林の場合は、林分が過密になり、形状比(樹高÷胸高直径)が高い状態だと冠雪害が起きやすいことが分かっています。今後も、県内の被害実態の把握や、航空レーザ測量成果等の高精度森林情報を活用を通して、林分の状態からの危険度を把握する手法を検討していく予定です。

【被害の起きにくい森林づくり】

針葉樹人工林の冠雪害を軽減するためには、適期に間伐を行い、形状比の低い木を育てることが基本です。もし、間伐が遅れて形状比が高い状態にある場合は、一気に間伐すると冠雪害を誘発する危険性があるので、弱めの間伐を繰り返す手当てが必要です。

気象的に危険度が高い地域では、特に適切な密度管理に努めてください。

  
図 冠雪害危険度図