コンテナ苗の根鉢サイズを考える

(岐阜県森林研究所) 渡邉 仁志



再造林を低コストかつ確実に実施するため、「早く植えられる」コンテナ苗に期待が寄せられています。一般的に、コンテナ苗はコンパクトな根鉢により植え穴を小さくできるといわれています。しかし、根切りをした裸苗の根系はコンテナ苗の根鉢より小さい場合があるため、植え穴が掘りにくい条件下ではコンテナ苗の植栽効率が上がらない事例がみられます。そこで、根鉢の高さが異なるヒノキ・コンテナ苗を育成し、得苗サイズ、植栽時間および植栽後の成長を比較しました。

苗木の根鉢を低くしたら?

根鉢の高さを15cm(容量約300cc、流通品と同等)、10cm(同約200cc)、5cm(同約100cc)に調整したコンテナに1年生稚苗を移植した後、1年間育成し、根鉢高さが異なる苗木を試作しました(図1)。このとき、5cm鉢苗の樹高はその他の苗木より低い傾向にあったものの、どの条件も岐阜県の出荷規格(樹高25cm以上で根鉢を形成していること)を満たしていました。これらの苗木を5月に下呂市の皆伐跡地へ植栽したところ、植え穴掘りの時間は15cm、10cm、5cm根鉢苗の順に短くなり、1本あたりの植栽にかかる時間も同様に短縮されました。根鉢を低くすることは、目論見どおり植栽のスピードアップに貢献できると考えられます。

  
図1 根鉢高さの異なるコンテナ苗
図1 根鉢高さの異なるコンテナ苗

低い根鉢苗の成長は?

植栽後の成長をみると、5cm根鉢苗の樹高成長量は他の苗と同程度でした(図2a)。その結果、得苗時にあった樹高差は、植栽1年目にはみられなくなりました。一方、5cm根鉢苗の根元直径と直径成長量は、他の苗に比べて小さいままで(図2b)、徒長気味の傾向がありました。

なお、多雪地域では雪による苗木の引き抜けが問題になりますが、今回の植栽地では、徒長傾向にあっても苗木の枯死や引き抜けは発生しませんでした。この原因は、植栽場所が少雪地域だったことに加え、冬までに根が地山に伸長できたからだと考えられます。つまり、この技術は、雪の少ない地域において春に植栽する場合に適用できそうです。

  
図2 苗木の植栽時および植栽1〜2年目期末の樹高、根元直径
図2 苗木の植栽時および植栽1〜2年目期末の樹高、根元直径


このように、ヒノキ・コンテナ苗の根鉢高さを制限して育成する方法は、得苗率や植栽後の成長への影響が小さいことに加え、植栽効率や(ここでは議論しませんが)育苗に要する資材費の点では、有効だといえるでしょう。現在流通しているコンテナ苗の根鉢容量はせいぜい2種類ですが、樹種、植栽場所や時期、目的に応じた複数の苗規格があってよいと思います。今後は、苗木の生理特性を加味しながら、適した根鉢サイズを検討する必要があります。