タワーヤーダでの安全作業のため、主索と控索にかかる張力を調べました。

(岐阜県森林研究所) 古川邦明



はじめに

県内の森林は、傾斜が30度以上の急傾斜地が約6割を占めています(森林研究所調べ)。そのため、急傾斜地で中長距離集材に適した架線系の林業機械として、タワーヤーダが注目されており、今後は導入が進むと思われます。

タワーヤーダは索を使って集材する架線集材機械です。主索や控索を固定するアンカーとして立木や伐根を使います。安全な作業のためには、集材作業中の主索や控索に発生する張力を明らかにし、十分な強度を持った根株を選ぶ必要があります。しかし、タワーヤーダの張力を調べた例は、全国的にも多くはありません。そこで、タワーヤーダでの集材作業中の各索の張力について調査しましたので報告します。

調査機種と調査方法

調査した機種は、県内に導入されている主索式のタワーヤーダ、イワフジ社製T40-TYと、コンラッド社製KMS-12Uの2機種です。KMS-12UはWood Linerとのセットです。T40-TYは皆伐全木集材、KMS-12Uは間伐と皆伐の全木集材(いずれも下荷)時の張力を調べました。

張力の測定には張力計(ロードセル)を用い、主索は先柱、控索は根株取付位置で計測しました(図1)。

張力の測定結果

張力測定結果の2種類を図2に示しました。T40-TYは主索の張力しか測定していませんが、スギ全木材(DBH:34cm,H:19m)を搬器まで引き寄せる作業(以下横取り作業)の際に、85.3KNの最大張力が発生しました。

KMS-12Uによる間伐・全木集材での主索最大張力は、スギ(DBH:42cm、H:30m)の横取り作業中の76.5KN、控索では34.2KNでした(図2の下図)。

同機種による皆伐全木集材では、モミ材(DBH:58cm、材長20m、梢端なし)を横取りしている時に材が暴れ、瞬間的ですが主索に154.6KNの張力が発生しました。材が異常な挙動をしなかった通常の集材では最大張力は137.5KNでした。調査中の控索の最大張力は39.6KNでした。なおこの現場では、主索を高く張り上げるため向柱を設けています。向柱があることで、控索に掛かる力は、減衰していると思われますので、控索のグラフは示していませんが、向柱を用いなかった場合、間伐での調査事例から推測して、70KN前後の張力が控索に発生する可能性があります。

おわりに

タワーヤーダの主索には材の挙動によっては150KN以上の張力が発生することが明らかになりました。控索は今回の調査では最大約40KNでしたが、控索は設置方法によって張力が大きく異なりますので、より大きな張力が発生すると思われます。1960年代に全国的に行われた根株の強度試験の結果を見ると、スギ・ヒノキは、根元径が60cmでも100KN程度の強度しかない場合もありました。タワーヤーダでの安全作業のためには、各部に発生する力を正しく理解して設置することが大切になります。まだまだ調査事例は少ないので、今後も調査を継続していきます。

図1 タワーヤーダ張力測定概要図
図1 タワーヤーダ張力測定概要図

図2 張力測定結果
図2 張力測定結果