皆伐が森林土壌に与える影響を調べました
―ヒノキ人工林での事例―

(岐阜県森林研究所) 田中伸治



はじめに

岐阜県内に広く植栽された針葉樹人工林は利用可能な時期を迎えており、今後は、間伐だけでなく、皆伐による収穫も増加すると予想されます。皆伐では、一時的でも上木がなくなるため、降雨による土壌侵食など、森林土壌への影響が懸念されます。また、土壌侵食によって最初に流出する表層土壌は、森林の地力や保水機能の維持にとって重要ですが、皆伐が森林土壌にどのような影響を与えるかはよく分かっていません。そこで、ヒノキ人工林の皆伐地において、土壌侵食量と表層土壌の詰まり具合を調査しました

土壌侵食量は?

調査は、同一のヒノキ林分を皆伐した場所(皆伐区)と間伐した場所(間伐区)で行いました。皆伐区は全木集材が行われ、伐採後1年目にヒノキの植栽、伐採後2年目と3年目に下刈りが行われました。間伐区は点状間伐が行われ、伐採木は全木集材されました。

まず、皆伐区と間伐区の伐採後3年間(毎年6月〜12月)の土壌侵食量を調査しました(図1)。皆伐区の土壌侵食量は、間伐区と比べて3.7〜19.1倍ありました。また、伐採後の年数が経過するにつれて、間伐区の土壌侵食量は減少しましたが、皆伐区では反対に増加しました。

間伐区では、間伐時以外に地表のかく乱がなかったので、徐々に土壌侵食が落ち着いたのではないかと考えられます。一方、皆伐区では、伐採に加え、植栽や下刈りなどによって、地表をかく乱する期間が長かったので、土壌侵食が多く発生したのではないかと考えられます。

表層土壌の詰まり具合は?

伐採後4年目に皆伐区と間伐区の表層土壌の細土容積重を調査しました(図2)。細土容積重とは、どのくらい土壌が詰まっているかの指標になります。一般的に土壌の表層よりも下層の方が大きいことが知られています。

調査の結果、皆伐区の細土容積重は、間伐区よりも大きいことが分かりました。つまり、侵食によって表層土壌が流されてしまった結果、下層土壌が地表に出てきた可能性があると考えられます。

今回行った調査では、皆伐が森林土壌に与える影響は間伐より大きいとの結果になりました。しかし、一事業地での調査結果ですので、条件の異なる場所で調査していく必要があると考えています。

  
図1 皆伐区と間伐区の土壌侵食量(6〜12月)
図2 伐採後4年目における皆伐区と間伐区の細土容積重