過密林の間伐を考える
冊子「木材生産のための過密林の間伐のしかた」を作成しました

(岐阜県森林研究所) 渡邉仁志



現在、主伐期を迎えた針葉樹人工林はその多くで伐期が延長される傾向にあります。また、間伐が不十分だったため過密になり、経済的価値や公益的機能の低下が危惧されている林もあります。針葉樹人工林は今、高齢化・過密化という新たな局面を迎えています。このような林を今後どのように取り扱っていけばよいのでしょうか。森林研究所では、過密林の施業を行ううえでの要点をまとめ、冊子「木材生産のための過密林の間伐のしかた」を作成しました(図1)。


木材生産のための過密林の間伐のしかた
図1 木材生産のための過密林の間伐のしかた


【過密林は間伐手遅れではない】

過密なスギ、ヒノキ壮齢林は、管理が行き届いた林に比べ、胸高直径が小さいため形状比が高く、枝が少ないため枝下高が高く樹冠長が短い傾向がありました。また、林の中に優劣のついた木が混在していて、細い木から太い木までばらつきが大きいことがわかりました。

過密林を間伐した後の直径成長は、細い木で小さいのに対し、太い木では大きいことがわかりました。太い木とは、すなわち樹冠が大きな木です。したがって、過密林ではすべての木が間伐手遅れの状態ではなく、成長に見合うだけの樹冠長がある木ならば、間伐によって今からでも成長できるといえます。



【まずは目指す森林の姿を考えて】

図2は過密な壮齢ヒノキ林を出発点にした間伐のシミュレーションです。細い木(下層木)を中心に間伐した場合(図中a)と太い木(上層木)を間伐した場合(図中b)では、残存木の将来の直径分布や平均が異なっています。過密林で成長を持続させるためには、間伐の際に「どんな木を残すのか?」を考えながら選木することが大切です。

この度作成した冊子には、間伐支援ツールとしてヒノキ林の「枝下高管理図」と「間伐手法選定フロー」を載せました。「どんな木を残すのか?」を決めるために、まず「どんな林を目指すのか?」を考えます。枝下高管理図(図3)から、目的(目標)の胸高直径が得られる樹高や枝下高の目安がわかります。また、現在の枝下高で将来的に到達できる胸高直径が示されるので、目標林型の設定にも役立ちます。

この枝下高管理図などを活用して、現状で無理のない目標林型を設定したら、間伐手法選定フローに沿って間伐手法を考えます。このフローチャートにより、作業条件(路網からの距離、間伐木の搬出の有無)ごとに最適な間伐手法が選択できます。林況によっては、伐期の延長、木材生産林からの方針転換、または皆伐・再造林を検討した方がよい場合もあるでしょう。それを見極めるためにも、まず目の前にある過密林をどうしたいのか、私たち自身が考えることが求められていると思います。


選木の違いが将来の直径分布に及ぼす影響
図2 選木の違いが将来の直径分布に及ぼす影響
システム収穫表・シルブの森「岐阜県東濃ヒノキ版」使用


ヒノキ林の枝下高管理図
図3 ヒノキ林の枝下高管理図
平均枝下高ごとの直線は平均的なヒノキ林における、
その枝下高のときの平均樹高と平均胸高直径の関係を示す。



この冊子は希望者に無償(郵送料のみ実費)でお配りしています。是非ご活用ください。