針葉樹薪の乾燥過程を調べました

(岐阜県森林研究所) 古川邦明



はじめに

ここ数年、薪による昔ながらの木材のエネルギー利用が見直され、針葉樹間伐材を薪として生産・販売する地域活動が各地で活発になってきています。針葉樹・広葉樹を問いませんが、木材を燃やして効率よく熱を発生させるためには、材が乾燥している必要があります。薪ストーブ用の薪では、含水率は20%以下が良いとされています。伐採したばかりのスギやヒノキの含水率は、50%以上ですから、薪で使うためには、桟積みなどで乾燥させる必要があります。では屋外に桟積みして、どの程度の期間で含水率は20%以下になるのでしょうか。一般には半年とか1年とか言われていますが、これを確認するために調査をおこないました。

含水率について

最初に含水率について確認しておきます。含水率には、WB(ウエットベース、湿量基準)とDB(ドライベース、乾量基準)の2種類あります。WBは、水分を含んだ状態の木材重量を基準としたときの含水率で、木材中の水の重量を、水を含んだ木材全体の重量で除して求めます。一方DBは、水分を全く含まない状態の木材重量を基準とした含水率で、木材中の水の重量を木材の乾燥重量で除して求めます。

木材は建築材などとして使う場合には含水率はDBを用いますが、燃料などで使う場合はWBを用いることが多いようです。本稿での含水率は、WB表示としました。

薪が乾燥していく過程を調べました

まず、スギ間伐材を35cm前後に玉伐りして四割または半割にして試験用の薪をつくり、雨が直接かからない軒下と、露天で被いが無い場所で桟積みして含水率の変動を比較しました。両桟積みとも、枕木を敷いて、高さ1m程度まで桟積みしました(写真)。

図1が計測結果です。軒下と露天とも、桟積み毎の平均でみると、含水率は同じように低下していき、約2か月後には7割以上の薪の含水率が20%以下になりました。引き続き5か月経過時まで計測を続けたところ、軒下ではすべての薪が10%前後まで下がりました。一方露天では、平均で10数%まで下がりますが、30%近いままの薪もあり、含水率のばらつきが大きくなりました。

次に、スギとヒノキで薪をつくり、材種による含水率の違いと、割材による乾燥の効果について調べました。丸太のままと半割、四割りに割材した35cmの薪を恒温装置で40℃に保って含水率の変化を記録した結果を図2に示しました。

開始当初の含水率は、スギ64%前後、ヒノキ53%前後と、スギの方が高いのですが、乾燥の速さはヒノキより早く進むという結果でした。また、割材による乾燥効果は、両樹種とも丸材より半割り、半割より四割した薪の乾燥が早く進むことを確認しました。

おわりに

今回の調査の結果からは、針葉樹間伐材の薪は、薪として進められている含水率が20%以下に乾燥するまで、スギで3ヶ月以上、ヒノキで4ヶ月以上は必要と思われます。しかし、乾燥させる場所や時期、天候等によっても乾燥条件は違います。条件別に乾燥目安が示せるよう、今後も針葉樹薪の乾燥について調査を進めます。

写真 調査のため桟積みした薪
図1 桟積みした薪の含水率変動
図2 割材の乾燥効果とスギとヒノキの乾燥の比較