間伐残材(端材)の収集運搬の採算性
〜トラックによる収集運搬〜

(岐阜県森林研究所) 古川邦明



はじめに

再生可能エネルギーの固定価格買取制度が7月から始まりました。「間伐材等由来の木質バイオマス」いわゆる未利用材を原料として発電した場合の買取価格は、33.6円/kwh(買取り期間20年間)です。では材の買取価格はどうなるのか、本当のところはまだ判りません。発電所着価格で8〜9千円/m3との試算もあります。そこで、間伐で発生する端材の収集運搬の採算性について検討しましたので、その結果について報告します。


調査した収集運搬作業

端材の運搬は10tonトラック(荷台容積約20m3)とし、積込みは12tonクラスのグラップルを用いて、荷台への積込時間を調査しました。積込時間は、トラック積込に配慮して、プロセッサで造材時に端材を整理した場合と、残材として処理した場合で比較しています。

積込時間の比較

トラック荷台への積込作業の効率は、整理された端材で5.1wet-ton/時、未整理で2.3wet-ton/時で、作業効率に2倍以上の違いがありました。荷下ろしは、車重計での計測時間を合わせても1回平均12分でした。

造材作業性の比較

端材は整理した方が、積込の作業効率は良くなりますが、そのために用材の生産効率を落とすようではいけません。確認のため造材時間を調査した結果、造材時に端材の整理作業が加わった場合の所要時間は平均146秒/本、整理作業が無い場合は平均143秒/本で、作業効率の差は認められませんでした。

収集運搬の採算性を試算

10tonトラックを使った場合の、現場から発電所までの所要時間とコストについて試算した結果を図に示します。発電所着価格が8千円/m3として試算すると、端材が整理されていれば運搬時間約150分以内で採算が合うとの結果に対して、未整理の端材収集では、運搬時間約90分以内となりました。  別の面から試算してみます。端材利用を想定していない現場では、約4千円/m3以下となると、採算が合う現場は無くなります。端材が整理してあれば、4千円/m3でも運搬時間が約50分の範囲内なら採算が合うとの結果になりました。

おわりに

固定買取制度により、未利用材でのバイオマス発電は期待できそうです。しかし、5,000kW規模の発電事業で年間7トン(14万m3)の原料が必要とされています(山林2012.2)。事業的には1万kwh規模が望まれるとも言われており、これだけの原料を安定的に供給することは簡単ではないでしょう。  固定買取制度が始まったと言っても、間伐材での木質バイオマス発電の導入には課題が多くありそうです。

運搬時間と収集運搬コスト
運搬時間と収集運搬コスト


トラックへの端材積込
トラックへの端材積込

 

この報告は、農林水産技術会議事務局委託プロジェクト研究「バイオマス利用モデルの構築・実証・評価」の助成を受けて取り組んだ課題の成果に基づいています。