研究員の一年間を追う

(岐阜県森林研究所) 中嶋 守



【研究員の本務】

研究員の本務は、みなさんご存じのとおり研究・開発です。
 以前の研究といえば、ニーズに即応しにくい基礎研究が主体を占めていました。それに対し、近年はまず林業関係者や企業などのニーズを把握することから始めています。だからみなさんの地域に密着した課題が多く、成果もすぐに活用できるものがほとんどです。
 例えば、近年急激な発生を見せているナラ枯れの防除、林地残材の有効活用、作業路の路面保護、伝統工芸用資源の造林、獣害対策、高齢化した人工林の管理、キノコ栽培の収益性向上、森林に蓄積された炭素の計測、花粉症対策、菌床の劣化防止、食物残渣の活用など。

一方では、今までの研究・開発で得られた成果を現地に普及させる技術移転・支援に取り組んでいます。ちなみに昨年度の技術支援は、実際に現場へ出かけていって実施したものだけでも130件余。普及活動は、その他にも発表、面談、電話、メールなどによって行っています。


【研究員のもう一面】

今回は、研究員のもうひとつの一面を紹介しましょう。
 森林は、地球にとって欠かせない重要な存在。だから一般の人たちに森林の大切さにもっと気づき目を向けてもらいたいとの願いから、研究員たちは、将来を担う子供たちを主体に、森林や樹木などへの関心を高めてもらうための催しの機会を捉え参加しています。

昨年6月に行われた『全国豊かな海づくり大会』では「森林と水とのつながり」をテーマに水生昆虫などを用いて出展したところ1,000名弱の方が、10月の『森と木とのふれあいフェア』では「樹木の特徴」を展示したところ1,400名のみなさんが訪れ夢中になって観察していました。その横顔を見ていた研究員たちもふと満足そうな笑みを浮かべていました。

夢中で年輪を数える子(海づくり大会関連行事)
夢中で年輪を数える子
(海づくり大会関連行事)

その他にもいろいろあります。様々なテーマで開催される生涯学習講座などの講師を昨年度は年間20件程務め、750人余が受講。
 林業事業体等の人材育成のための技術講習会も重要な業務。昨年度は18回開催、460名余が参加。
 学術論文等への投稿も研究者にとっては不可欠なもの。昨年度は21件。学会等での発表は22件。
 マスメディアの活用も重要な普及手段。記者発表と取材対応は昨年度は40回余。
 問い合わせや技術相談の対応にも大わらわ。多い時は年間800件近い。その全てを記録に残し所長まで回覧、必要に応じ意見が付されます。案件の多くは現地へ出向いての対応。インターネットの普及により、ホームページへのアクセスは年間87万件を超え、時には中学生からの問い合わせも。
 これら以外にも、研修生やインターンシップの受入れも行っています。
 このように研究員は、県内外の各地を連日駆け巡っています。


【計画に基づく活動】

こうした研究員の一面も、ただ単に要請等があるから対応しているわけではありません。当初に年間の達成目標を定めて随時進捗管理をしながら、準備と検討を繰り返して取り組んでいます。


【みなさんへのお礼】

研究員のこうした活動も読者のみなさんをはじめ関係者方々のご理解とご協力によるものと感謝しております。今後ともよろしくお願いします。