細り早見カードを開発しました

(岐阜県森林研究所) 大洞智宏



はじめに

以前(2006年3月号)、「木のスタイルはみな同じ?」と題してスギ・ヒノキの「細り」について紹介しました。そこでは、岐阜県には細り表がなく、現在制作中であることをお知らせしていました。その後、データの収集を続け、本年度、スギ・ヒノキについて岐阜県版の細り表の調整が終了しました。

細り表は、胸高直径と樹高と一定の高さごとの直径の関係を整理した表です。胸高直径ごとに別々の表になるため、その分量は、スギ、ヒノキどちらかだけでもA4版で数ページにわたります。このため、現場での使い勝手が良いとは言えません。そこで、細り表をめくらなくても、細りがわかる「細り早見カードを」開発しましたので、紹介します。

幹の「細り」

ここで、改めて樹木の「細り」について説明をしたいと思います。樹木の幹は、根元から梢に向かって細くなっています。極端にいえば円すい形をしていて、根元と梢付近の直径は大きく異なります。この、根元から梢までの太さの変化度合いのことを「細り」と呼んでいます。

下の写真は、厚さ数cmの円板を樹高22mのヒノキから3mおきに取り、重ねたものです。幹が細くなっていく様子がわかると思います。


写真1 樹木の「細り」
樹木の「細り」

細りを知る意味

立木を伐採する前に一本の木からどのような材が収穫できるかを推定するには、その立木の色々な高さの直径を知る必要があります。現場では、手の届く範囲の直径は直接測定し、高い位置の直径は森林技術者の経験から予測しています。このため、ベテランの技術者でないかぎり収穫の推定をすることは簡単なことではありません。しかし、木の「細り」の度合いがあらかじめ分かっていれば、それを利用することによって、手の届かない位置の直径を知ることができ、誰でも収穫を予想することができます。

図1 細りを知る意味
細りを知る意味

「細り早見カード」

細り早見カードは、樹高と胸高直径とを組み合わせることによって、誰でも、どこでも、簡単に、立木の手の届かない位置の直径を知ることができるツールです。その大きな特徴は、現場に携帯しやすいようにポケットサイズにしたこと、2枚のカードをスライドさせ樹高と胸高直径を決めることで、従来の細り表に比べ、簡便に任意の高さの直径値を求められるようになったことです。このような特徴を持つことから、例えば、現場で採材の検討をする場合や林業事業体が森林所有者に施業提案を行う場合などに活用できると思います。

現在、このカードを希望される方に配布できるよう調整中です。将来的には、利用していただいた方々の感想を基にバージョンアップを図り、さらに使いやすく改良していきたいと考えていますので、ぜひ、ご活用ください。

図2 細り早見カード
細り早見カード