渓流を横切る作業路開設

(岐阜県森林研究所) 杉山 正典



森林研究所では一昨年度から、作業路開設による下流域の河川の濁りの変化や河川生物への影響を調査して最適な作業方法を検討しています。

森林のたよりNo.644(2007年5月号)No.649(2007年10月号)において、作業道開設による濁りの変化について報告しました。今回は、渓流を横切る作業路を新設し、濁りを調査した結果について報告します。

【渓流を横切る作業路の新設】

加茂郡東白川村白川支流流域において、実験的に渓流を横切るように作業路を開設し(図1)、作業路新設による渓流への影響を調査しました。

 
図1 新設作業路

【作業路開設方法は?】

渓流の横断は、洗越工としました。幅員は3mとし、渡渉点に布団籠を設置し、岩屑を投入、上面を水平とし、その上に丸太を並べ締結しました(図2)。平常時には、渓流水は布団籠内の詰石間を流れ、増水時に丸太上面を流れるよう施工しました。なお、施工時に使用した詰石は作業路開設時に発生した岩屑、丸太は支障木を利用しました。

 
図2 洗越工の概要

【作業路横断による渓流の濁りは?】

渓流を横切る作業路の施工時に、施工箇所の上下流において施工前・施工中及び施工後に採水を行い濁度の測定を行いました。施工前は濁りが発生していませんでしたが、施工中は、濁度が非常に大きくなりました(図3)。施工後、1時間経過すると、施工前とほぼ同様となり、下流域への影響が少なくなりました。

図3 洗越施工時の濁度変化
図3 洗越施工時の濁度変化

【増水時の濁りは?】

渓流を横切る作業路開設箇所の上下流において、増水時に濁水中の土砂濃度を調査しました。施工直下においては土砂濃度が増加していましたが、100m下流においては、土砂濃度が低くなりました。増水時においても下流域への洗越施工による影響が少ないことが確認されました。

 
図4 洗越下流における微細土濃度調査結果

今後は、洗越施工箇所の上下流における濁水調査を継続的に行うと共に他地区の作業路開設箇所における調査を行っていく予定です。