情報機器を森林管理に活かす(9)
GPSで路網図や境界図を作成

(岐阜県森林研究所) 古川 邦明



前回のデジタルカメラで撮影した画像ファイルに、GPSの計測結果から位置情報を付加する方法について書きました。説明の順番としては後先になってしまった感もありますが、今回はGPSで作業路や境界の計測と地図への取り込み、さらに管理とその活用の方法について紹介します。


【再度計測時の注意点】

GPS受信機の性能の向上は著しく、森林内でも全く受信できないといった場所は殆ど無くなりました。しかし、森林では山腹や立木など電波を遮蔽する障害物が多いため、計測誤差が大きくなってしまいます(図1)。作業路や境界線を計測して地図上で情報管理するすることが目的ですから、できるだけ正確な位置を計測したいところです。これまでの連載でも繰り返し述べていますが、計測時は、

@GPSを持ち歩く場合はできるだけ高い位置で水平に持つ、

A車で計測する場合は屋根の上かダッシュボードなどできるだけ障害物がない場所に置いて計測する、

等に心がけてください。


        
GPS計測条件による計測精度調査結果
図1 GPS計測条件による計測精度調査結果

※《図1の補足》GPSで一般道から林道を4往復した際のトラックデータ(赤実線)。背景は森林基本図(縮尺:5千分の1)。一般道では(図右側)、計測値にばらつきはないが、山中では、走行毎の計測値のばらつきが大きくなっている。左上の青枠内は、調査に使用したGPSを用い上空が開けた駐車場で約30分間計測した結果。破線で示した円の半径は50mである。計測値は4m以内に収まっていた。GPSで一般道から林道を4往復したトラックデータ(赤実線)。GPSのこのような特性を理解しておく必要がある。

【データの精度】

人によって基準は違うでしょうが、求める精度によって適した計測方法は変わってくると思います。2万5千分の1の地形図上での管理であれば、トラックデータを自動取得し、カシミールなどのソフトで地形図と重ね合わせて表示し、異常な計測点を削除・修正することで実用上十分な管理図となると思います。当然同じ場所を繰り返し計測すれば、より精度は向上します。

一方、森林基本図(縮尺:1:5,000)上での管理するなら自動取得ではなく、一般の測量と同じように、測点毎に位置計測するべきでしょう。PDAやノートパソコンでGISやGPS測量システムを使うことができれば、測点毎の計測によるトラックデータが得られます。しかしハンディGPSにはその機能はありませんから、ポイントデータ(連載(2)646号記事を参照)で代用することになります。測点に立って、ハンディGPSやPDAの画面にリアルタイムで表示される位置を見ながら、計測値が安定するタイミングを見計らって、データを取得していきます。この時、GPSの画面に地形図や森林基本図などが表示できると、計測値の変動の様子や前後の計測点との位置関係を画面地図上で確認することで、計測値が正しいかどうかを現地で判断しながら計測することができます(図2)。この方法がGPSによる森林計測として、現時点では最も適した方法だと思います。

地形図上に計測点表示
図2 地形図上に計測点表示

計測に適したGPSやソフト、計測データの修正や作業路など平面図作成への利用方法については、次回以降に紹介します。