情報機器を森林管理に活かす(6)
GPSを業務で使うために知っておきたい3つの基本知識 (後編)

(岐阜県立森林文化アカデミー) 竹島 喜芳



これまで3回にわたり、私がGPSを使ってきて「あー、これは必要だ」と感じた事柄を書いてきました。そういった事柄も今回で一段落です。前回、GPSに欠かせない3つの基本知識の一つが「地球の形」であることをお話しました。今回は残る2つの基本知識、「地図」「測地系」についてお話しします。



基本知識2 地図

林業でいつも目にする地図というのは、「森林基本図」と「森林計画図」です。前は、身近な地図といえば、それらか道路地図だけでした。それだけなら、地図や測地系について知らなくても仕事に支障はありません。ですが、最近は状況が違ってきました。先ほどの地図に加え、ふぉれナビGoogle Earth無料GIS カシミールなど。GISの普及で私達は多くの地図を目にし、それらを使う機会が増えてきました。

それぞれを別々に使っている限りなにも問題はおきないのですが、いろんな地図を重ねたり、GPSを活用しようとしたりすると問題が起こることがあります。

ふぉれナビ
岐阜県外部公開型森林GIS(ふぉれナビ) 様々な地図を重ねて表示できる

丸い地球を平たい紙に正確に書き写すことはできません。地図というのは何かを犠牲にして「球体」を「平」にしています。かなり乱暴な言い方ですが、私達が通常目にする地図には2種類の方法で作られた地図があります。一つは、本屋で買うことができる地図(山登りでつかう地図で,最近は本屋に行けばCDで売られています)、もう一つは、仕事で目にする地図(森林計画図など)です。

本屋で売っている地図は、日本全体を捉えるときに便利な地図で、全ての地図を張り合わせれば日本地図ができますが、丸い地球を日本の大きさで一枚の紙にしているので、ちょっと強引に平らにしているところがあります。そのため、地図には山登りには支障がない程度の歪みがあります。しかし、山登りでは支障がなくても、都市計画など日々の私達の生活に直結するもとになる地図は、この歪みでは大きすぎます。そこで、行政で使っている地図の多くは歪みを少なくする工夫をして丸い地球を平らにしています。

もしも、これからGPSやGISを使う上で「あれっ、位置が合わない」という現象に出会ったら、その原因には「もともと地図の作り方が違う」可能性があることを頭の片隅に入れておいてください。



基本知識3 測地系

この測地系の話は前回お話しした「地球の形」と今回の「地図」の両方に関係する話です。そして加えて「座標系」といった耳慣れない言葉を考慮した総合的な考えです。

ここでは、新しくでてきた座標系ということをお話します。地球上のある場所を表現するとき、まず思い浮かぶのが「緯度・経度」です。もう一つが、ある基準点から、南に何m、東に何mという考え方です。これを平面直角座標系といいます。

多く普及しているハンディーGPSは、緯度経度で場所を表示しています。しかし悪いことに森林計画図等の歪みの少ない作り方をした地図では、ある場所の位置は緯度経度ではなく、原点となる地点から、その場所が南に何m、東に何mと書かれています。森林計画図の枠外に大きな数字が書いてあるのがそれです。これでは地図とGPSとを相互に使うことができません。

ですが、緯度経度座標系を平面直角座標系に変換する方法があります。国土交通省国土地理院のサイトにある測量計算のページに行けば座標系の変換ができます(日本測地系・世界測地系については前回述べました。岐阜県は19座標系の7系だということを知っておけばホームページを使いこなせます)。他にもいろいろありますが、国土地理院のホームページを覚えておけば安心です。



ちょっと駆け足になってしまいましたが、是非GPSやGISを使うときに覚えていただきたいことを4回に分けてお話してきました。さらに詳しい話は時々開催する森林文化アカデミーの短期技術研修でお話ししたいと思います。これまでに紹介しました「正しい知識」と「正しい操作」でGPSを十分に活用されることを願っています。