情報機器を森林管理に活かす(3)
GPSの“正しい”使い方の鉄則 (前半)

(岐阜県立森林文化アカデミー) 竹島 喜芳



【この稿のねらい】

私が森林文化アカデミーに着任した2001年当時、私はお会いする方々皆さんに自己紹介をしなければいけませんでした。日ごろやっていることのひとつを説明するため「GPS」に触れると、少なからぬ人が、「あ〜GISねぇ」という反応をしてきたものです。確かにふたつとも聞きなれない英語。どちらも地図だとか位置などに関係する道具。そんなとき私は“混乱さもありなん”と思ったのでした。

ところが、あれから7年の月日が経ち、気がつけば多くの岐阜県内の森林組合・素材生産業者の方々は、自らGPSを購入して日ごろの業務に役立てているような時代になっています。いまでは、ほとんどの方がGPSとは「なにものか」について正しい認識を持つようになっています。

そういった日ごろ使っている道具なのですが、実際お話を聞いたりしてみますと、GPSの正しい使い方を知った上で活用されている方はとても少ないように感じます。そこで今回と次回の記事で、GPSの“正しい”使い方の4つの鉄則を紹介し、これまで以上にGPSとのよいお付き合いをしていただければと思います。

さて今回はふたつの鉄則です。



鉄則1 GPSの電源は現場で入れるな。山に入る前に入れよ!

前回の記事にGPSは複数(4機以上)の人工衛星からの電波信号を受信して、位置を算出しているとう話がありましたが、そこにGPSを使う大事なポイントがかくれています。なぜ、4機が必要なのでしょう。GPS受信機の時計が正しい時刻を示していれば3機の衛星の電波を受信すれば位置は算出できます。しかし、GPSの時計は腕時計のように遅れたり進んだりしているため3機の衛星から位置を算出してもその値には大きな誤差を含むことになります。

そこで、GPS受信機は4機目の衛星を捉えることで、受信機の時計を自動的に修正する仕組みになっているのです。これが鉄則1を守らなければいけない理由です。

というのは、GPSは電源をいれるとまず4つの衛星を探して受信機の時計を修正します。一方、山の中は、周りの林や地形の影響で人工衛星からの電波が弱められたり、雑音が入ったりしてGPSの位置算出誤差が大きくなる場所です。そのため、山の中ではじめて電源を入れると、GPSの位置算出誤差が、本当は木や地形の影響で誤差が大きく出ているのにもかかわらず、受信機は時計が狂っていると判断して、一生懸命(?)時計を修正しつづけます。

このような状態で計測された位置は誤差が大きいばかりか、時には位置計測が不可能になったりします。特にこのようなことは、(1) GPSをしばらく使っていなかった、(2) いつもGPSをつかっている場所から遠く離れたところでGPSを使うとき、(3) GPSの電池を抜いて保管していたとき、によく起こります。

そこで、なるべくGPSの電源は事務所を出るときに入れて、車のダッシュボードのうえなどおいて現場まで行くようにしてください。



鉄則2 そのGPS特有のもち方がある。首からさげて移動するな!

岐阜県でもっとも普及しているGPSはハンディーGPSと呼ばれる手のひらに収まるGPSだと思います。そんなGPSにはご丁寧に首からさげることができるヒモがついていたりします。これがクセモノです。

そんなことをされたらGPSを首からさげてもち歩き、操作が必要なときにだけGPSを持ち上げて使いたくなってしまいます。しかし、それがいけません。GPSは受信機固有のもち方があるのです。ところが、そんなことを書いてある取扱い説明書はあまり見かけません。ではどんなもち方がいいのかに興味がわくところですが、GPSによって異なりますので、ここで一概にコレ!とはいえないのですが、私が知る限り岐阜県で最も普及しているGPSはガーミンという会社が作成しているイートレックのようですので、その正しい持ち方をご披露します。

イートレックは水平にしてもってください。

大事なのは、移動の最中も水平に保つことです。首からさげるというのはもってのほかです。しかし喫茶店のウェイトレスのように常に水平にして山の中を歩いたりするのは現実的ではありませんので、GPSを例えばリュックのヒモに結わえて、セキセイインコを肩に載せるようにして移動するなどの工夫をしてみてください。

GPSの正しいもち方

今回は2つの鉄則を紹介しました。次回に残り2つの鉄則をお話します。