環境に配慮した作業路開設
森林整備方法について

(岐阜県森林研究所) 杉山 正典



低コスト間伐を進めるため、高密度な作業路開設が進められています。しかし、急斜面地や条件の悪い箇所において安易に作業路開設が行われると、作業路からの土砂流出による河川への影響が心配となります。

そこで、森林研究所では昨年度から、森林文化アカデミー、河川環境研究所等と共同で、作業路開設による河川への影響調査を実施し、作業路を新設し下流域の河川の濁りの変化や河川生物への影響を調査して最適な作業方法を検討しています。また、この課題では、手入れ不足人工林の適正な間伐手法についてもあわせて検討しています。

図-1 新設作業路と調査河川の概況
図-1 新設作業路と調査河川の概況

【実験的な作業路の新設】

作業路の開設は、東白川村の既存林道から調査河川の上流部に等高線沿いに設置しました(図-1)。作業路の道幅は2〜3m、始点から終点までの距離は約1kmでした。初年度は一般的に行われている方法により作業道開設を行い、その影響を調査しました。

【調査河川は?】

調査河川は白川の支流のひとつです。源流から本流に合流するまでの距離は約3km、合流点における川幅は3〜4mでした。本流との合流点から約1km上流の作業路終点までの区間を河川調査区としました(図-1)。

【作業路開設時の濁りは?】

作業路開設中、急斜面地において岩礫が崩落し、河川に堆積する箇所がありました。崩落前後に河川の濁りを測定しましたが濁りは増加しませんでした。粘土質でなく岩礫面の場合は、崩落があっても河川汚濁の影響は少ないことが分かりました。

また作業路は、数ヶ所、小さな谷(谷幅1m未満)を横切りました。横断箇所が粘土質の場所は、雨が降った際に、作業路表面・側面の土砂が谷に流れ込み、濁りが発生しました。しかし、60m下流においては濁りが少なくなり河川への影響が少ないことが確認されました(図-2)。この後、作業路表面に砕石を敷いてからは降雨時の濁りの発生が少なくなったことが確認されました。

図-2 作業路と交差する谷の濁度測定結果
       (0m:新設作業道と谷が交差する排水管位置)
図-2 作業路と交差する谷の濁度測定結果

今回の作業路開設においては、下流域への影響は少なかったのですが、急斜面地や粘土質の場所に作業路開設を行う場合は、事前に土砂崩落・土砂流亡を抑える工事を行う必要があると考えられます。

今後は、縦断勾配や切取勾配を変えた作業路を開設し、路面の状況・雨水による土砂流亡変化を継続的に調査して、作業路開設や森林整備の指針づくりを行うことにしています。