間伐作業用モノレールを作りました

(岐阜県森林研究所)古川邦明


【間伐作業用モノレールを作りました】

 間伐材の生産を促進するため、間伐作業の機械化が進められています。林業の機械化には、高密度に作業路を開設できればその分低コスト化できます。しかし、35度以上の急傾斜地や崩壊しやすい山肌のところでは、高密度に作業路を開設することは難しいでしょう。こういった場所での間伐作業の機械化を進めるため、モノレールが優れていると考えました。

 モノレールは、急傾斜でも山腹を削るなどの土木工事が必要ありません。45度位の斜面でも直登できますし、立木などの障害物もよけながら開設できますから、設置作業で山を荒らす事はありません。モノレールは急傾斜地での間伐作業の機械化に適しているといえます。しかし、これまでモノレールは間伐作業に使われていませんでした。

 そこで、森林研究所では森林総合研究所や民間企業等と共同して容易にレールの敷設・撤去ができ、効率的な材の搬出ができるモノレールの開発に取り組みました。

 なおこの開発は、農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」の採択を受けて行っています。

【開発システムの概要】

1.作業システム
 今回開発に取り組んだモノレールによる作業システムを図1に示します。斜面の直登方向に主路線を配置し、主路線から集材用の支線を分岐させます。支線を順次付け替えていくことによって、作業区域を面的に広げます。
2.敷設撤去の簡略化
 レールを支える支柱を「」形状にしました。この支柱の両側に杭を打ち込み固定します。地面への打ち込みが少なくても、レールの支持力が十分確保できます。このことによってレールの設置と取り外しが楽にできます(写真1)。
3.搬出作業の効率化
 材を運搬し、荷下ろしして、また元の場所まで戻る工程を全て自動で行う作業台車を開発しました。土場での荷下ろし作業や操作の人員が不要になり、システム全体の作業効率の向上を図りました(写真1)。
 また、一番の課題であった傾斜地での材の積み込みのために、レール支柱に取り付けて使用する簡易クレーンも開発しました。
図1.モノレールによる作業の概念図
図1.モノレールによる作業の概念図
写真1.自動搬出する運搬台車
写真1.自動搬出する運搬台車

【システムの実証試験】

 加子母森林組合の協力を得て、開発したシステムの検証を行っています。まだ途中結果ですが報告します。

1.レール敷設撤去の作業性
 地形や土壌条件で異なりますが、3人一組で作業して、レール敷設は1日60〜90m、撤去作業は1日90〜120mが可能であることを確認しました。
2.搬出作業生産性の確認
 平均傾斜30度、ヒノキ7齢級、搬出距離120mの現場での、間伐材の木寄せと積み込み作業で作業功程を調査しました。作業は2人で行い、生産性は4.8m3/日でした。作業方法を工夫することで、生産性を上げることができそうです。

【今後の取り組み】

 今年5月には、現地で林業関係者や地元中学生らに公開しました。その際いただいた意見等を参考にしながら、現在も作業性や性能の確認のための調査を行っています。これらの結果を受け、モノレール作業システムの完成を目指します。


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