森林浴で気分転換はいかが
〜効果をもたらすものは〜

(岐阜県森林研究所)井川原弘一


 最近では、心身をリフレッシュするために、森林を訪れるという人が増えてきているようです。実際に、木漏れ日の降りそそぐ森林の中を歩くことで、もやもやとした気分がスッキリしたという経験をされた方も多いと思います。

 このような森林浴の気分転換の効果は経験的に知られていましたが、最近になって、科学的(定量的)にも解明されつつあります。今回は、この気分転換の効果をもたらす要因について検討しました。

【気分転換の効果】

 気分とは、ある程度の期間持続する、嬉しいとか、楽しいという、さまざまな感情の一つであり、何らかの操作で容易に喚起できるものとされています。そのため、森林の中を歩く前と歩いた後の気分を測定すれば、森林浴による気分転換の程度を把握することができます。

歩いた森林は針葉樹の林でしたが、明るく整備されており下層植生も多く、色鮮やかな林内でした。
(南ひだ健康道場:下呂市萩原町)
歩いた森林は針葉樹の林でしたが、明るく整備されており下層植生も多く、色鮮やかな林内でした。

 今回の実験では、森林の中を歩いたときと街の中を歩いたとき、どのくらい気分転換ができたのかを比較しました。その結果、森林の中を歩いたときには、ストレス感やイライラとした感じが解消されていました。これは、街の中を歩いたときには、みられない効果でした。

【歩く場所に対する印象】

 五感で感じる森林の中の環境が、気分転換の効果に影響しているのではないかと考え、歩いた場所に対する印象も同時に尋ねました。

 その結果、森林の中と街の中に対する印象は、大きく異なっていました(図)。森林の中に対しては、やや好きで、やや快適で、やや自然であると感じていました。一方の街の中に対しては、やや嫌いで、やや不快で、かなり人工的であると感じていました。

図.歩いた場所に対する印象
図.歩いた場所に対する印象

【気分転換をもたらすものは】

 これらの結果を解析したところ、森林に対して自然らしいと感じたことや、好きと感じたことが、ストレス感の解消につながっていました。具体的には、その場所が、健康的で、落ち着いていて、涼しく、美しいと感じられたことが、気分転換をもたらしたと考えられました。

 このように、気分転換の効果をもたらす要因として、歩いた場所の印象が関係していることがわかりました。


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