炭素蓄積量は土壌によって異なるか?

(岐阜県森林科学研究所)渡邉仁志


 森林生態系が炭素蓄積の場として注目されていますが、地上部に比べ土壌など地下部における調査例は少ないのが現状です。そこで現地調査に基づいて、県内に広く分布する褐色森林土壌のうち適潤性土壌(B)と乾性土壌(B)の炭素蓄積量を求めてみました。なお乾性土壌については可児市の針葉樹林と同じ調査地の結果です。
 まず物質中の炭素率を測定するCNコーダーを利用し、土壌試料の炭素含有率を実測しました。次に土壌中の炭素蓄積量を、A0層については炭素含有率(%)×乾燥重量の計算から、鉱質土壌については各層位の炭素量(炭素含有率(%)×層厚×容積重)を深さ方向に積算して推定しました(図−1)。
 得られた炭素蓄積量は、適潤性土壌でhaあたリ107t、乾性土壌で87tとなり、そのほとんどが鉱質土壌中に含まれていました。土壌型で比較をすると、乾性土壌に比べ適潤性土壌の方がより多くの炭素を蓄積していることが分かりました。また乾性土壌林分の主林木の蓄積量は20〜25t/haですから、この土壌には主林木の3〜4倍もの炭素が蓄えられていることになります。
 森林生態系の炭素固定能力を適切に評価するためには、土壌においても信頼度の高いデータの集積が必要です。そしてそのデータはこのような調査によって集められています。

表1 土壌の炭素蓄積量(60cm深まで)

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