パソコンで予測するヒノキ林の成長
−東濃ヒノキのシステム収穫表ができました−

(岐阜県森林科学研究所)渡邉仁志


◆はじめに
 人工林管理のためには、林分の現況把握と将来の成長量や収穫量を予測することが重要です。林分の収穫量を予測するため、従来は収穫表や密度管理図が用いられてきました。これらから得られる情報は林分の平均値(平均樹高、平均胸高直径など)や総量(材積など)に限られており、どの径級の個体が何本収穫できるのかといった情報を予測できませんでした。
 最近、システム収穫表と呼ばれる、コンピュータの演算機能を利用して林分の成長を予測するシステムが開発されています。このたび京都府立大学の田中和博教授の「シルブの森」をベースに、岐阜県東濃地域のヒノキ人工林にあうよう調整したシステム収穫表「シルブの森岐阜県東濃ヒノキ版」を作成しました(以下シルブの森)。
 このシステムでは、現況に基づいて林分の成長を予測します。システム上で間伐の時期や本数(間伐計画)を入力すると、将来の林分の姿がシミュレートできます。この間伐計画を自由に変えることによって、林分の将来の姿を比較し検討することが可能です。

◆システムを使う前に
 シルブの森では、現況をもとに林分の成長予測を行いますので、まず林分調査を行う必要があります。必要な調査項目は、林齢、調査面積、胸高直径(全木)、樹高(10本程度)です。林分調査は半日程度で終わる内容ですので、ご自分の山を見がてら、野外で汗を流してください。

◆システムの概要
 シルブの森は、マイクロソフト社のMicrosoft(R) Windows(R)上で動作する表計算ソフトMicrosoft(R) Excel(エクセル)で作成されています。表計算ソフトを使ったことのある方なら、簡単に操作できます。使い方をフロー図に沿って説明します(図1)。
図1 シルブの森のフロー図

  1. データ入力 現地調査結果を入力します。
  2. 間伐計画の登録 胸高直径階分布の推移などに着目し、間伐計画を入力します。
  3. 森林の将来予測 胸高直径階分布、それに対応した樹高、蓄積などが5年ごとに出力されます。プリンターがあれば、一覧表やグラフが印刷できます。
  4. 意志決定 間伐計画を検討します。このシステムでは、間伐時期や直径階ごとの間伐本数を5年ごとに自由に設定し、最大5個の条件を同時に比較できます。

 間伐は目的によって適した方法が違いますが、例えば次の点に着目することができます(シルブの森ではいずれでも検討可能です)。

図2 25年生ヒノキ人工林の胸高直径階分布の推移(間伐方法を変えてシミュレートした結果から作成)

◆シルブの森の適応範囲
 現在のところ、シルブの森の適応範囲は次のとおりです。
【期間】実際の林分で検証した結果、30年後程度までであれば、比較的高い精度での予測が可能でした。システム上は50年後まで予想できますが、長期間になるほど現実との差がより大きくなると考えられます。
【地域】岐阜県の東濃地域(恵那市、中津川市、恵那郡の各町村および下呂市のうち旧下呂町の範囲、加茂郡のうち白川町、東白川村)のヒノキ一斉人工林

 今後、調査データや検証事例を増やすことによって、システムの精度をより向上させたり、適応地域を拡大させたりしていきたいと思っています。

◆シルブの森を使ってください
 このシステムは、使用されないことには意味がありません。森林科学研究所ではプログラムとともに分かりやすい操作説明書を作成しましたので、お問い合わせください。シルブの森を現場でどんどん使っていただき、使い勝手や予測結果に関するご意見、ご感想をぜひお聞かせください。皆様からのご意見、ご感想は、システムや操作説明書の改訂の際、参考にさせていただきます。


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