平成二十四年度 第一回高性能林業機械オペレータ養成研修
課題解決のための技術

(岐阜県森林研究所) 池戸秀隆



はじめに

八月二十七日から九月十四日までの期間のうち九日間、山県市円原地内で岐阜中央森林組合の職員五人を対象に現地研修を行いました。
 この研修は、事業体が現在、仕事を行っている現場に入り込んで、その中でトレーニングするOJT方式で行います。
 今回の現場は、急峻な斜面が多かったことから、架線系集材作業が中心となりました。
 準備されていた高性能林業機械は、〇.四五ベースのスイングヤーダで、一00m以内の範囲を集材区域とした研修になりました。
 スイングヤーダを使って集材する場合でも、ちょっとした工夫で効率の善し悪しが変わってくることから、現場状況に応じたノウハウを提案し実践しましたので、ご紹介します。

現場1 林道上部の集材

○林分 三十から四十年生ヒノキ、直径二十p、樹高十七m
○集材方法 約八十mをランニングスカイライン方式で下げ荷集材
▼課題 先柱が山の上に位置するため、「先柱設置」に要する控えの機材(控え索、チルホール、クリップ、滑車、ベルトスリング)が多いので、抱えて登るのが大変です。
▼提案 「2車折り返し」から「複数滑車折り返し」に変更することで機材を減らし、滑車とベルトスリングのみで架設するようにしました。
▼効果 重い機材を減らすことにより、山に持って登る労働負担を軽減できました。また、スピーディーに架設することができました。
  
先柱での複数滑車折り返し
先柱での複数滑車折り返し

  
ランニングスカイライン 先柱設置の方法
ランニングスカイライン 先柱設置の方法


現場2 急傾斜での集材

○林分 五十年生スギ、直径約三十p、樹高約二十m
○集材方法 約七十mをランニングスカイライン方式で上げ荷集材
▼課題 地山が四十度と急斜面のため、一般的に行っている重機側で搬器の組立てをしようとすると、ホールバックライン(青線)を持って斜面を往復するため、架設に時間を要します。
▼提案 スラックライン方式で、機材を下方の先柱へ運んでしまい、ランニングスカイラインに組み直すようにしました。
▼効果 先柱設置の際、通常、往復するところを、索を持って、一回だけ下ればよいので、短時間で楽に架設することができました。   
スラックラインによる機材降ろし 先柱への機材降ろし作業
スラックラインによる機材降ろし 先柱への機材降ろし作業


現場3 一様な緩斜面での集材

○林分 四十五年生スギ、胸高直径約二十p、樹高 約十六m
○集材方法 約五十mをハイリード方式で上げ荷集材
▼課題 集材範囲が広いため、ランニングスカイラインでは張り替えの回数が多くなり、先柱設置に時間を要してしまいます。
▼提案 赤線のホールラインと青線のホールバックラインを素輪でつなぎエンドレス索にするハイリード方式の採用で先柱設置を省くようにしました。
▼効果 1列集材したら素輪を切り、次列の滑車にラインを移動して、重機を前進させ、再び素輪でつなぎライン上の伐倒木を集材していきます。ランニングスカイラインと比較し、架設時間が短いことから集材時間の短縮を図ることができました。     
ハイリードでの集材作業 ハイリードによる索張り状況
ハイリードでの集材作業 ハイリードによる索張り状況


現場4 立木密度の濃い箇所

○林分及び集材方法 現場3と同じ
▼課題 前回の間伐で、密度に濃淡が生じ、伐り足りない箇所が残っていました。
▼提案 先柱を変えないで、ジグザグ滑車を使うことにより、ラインを曲げて密度の濃い箇所から集材します。
▼効果 比較的密度の高い箇所の立木も伐倒し搬出することができました。
   
ジグザク滑車を使った集材
ジグザク滑車を使った集材

まとめ

これまでの研修でもジグザグ滑車を使った集材を試みましたが、滑車から索が外れることがあり上手くいきませんでした。
 この研修に先立ち、長野県の信州式搬出方法を北信州森林組合で学ぶ機会があり、これまでやってこなかった8の字素輪の採用やジグザグ滑車とラインの内角を120度程度と鈍角にセットする技術等を試した結果上手く行きました。
 山の作業では、重い機材を持って斜面を上り下りすることは辛いものです。体に負担の少ない作業は作業員に喜んでもらえ、何より、作業効率を上げ、さら には安全な作業にもつながります。
 今回行った作業前の危険予知活動や作業後のヒヤリ・ハット活動と合わせ、修得した技術を活かして、生産性の向上を図られることを期待します。

   
県認定証を手にした修了者
県認定証を手にした修了者