ヘアピンカーブ設計支援ツール
「ヘアピンくん」を作成しました

(岐阜県森林研究所) 長屋公三



はじめに

平成二十三年森林のたより6月号で、作業道切り肩盛土尻位置判定ツール「切り盛りくん」を紹介させていただきましたが、その派生ツールとしてこの度「ヘアピンくん」を作成しましたので紹介いたします。

ヘアピンカーブの路体構造と杭の位置関係

ヘアピンカーブをセットする場所を選ぶ場合、安定した路体を作るためだけでなく、土工量を抑えるためにも「出来るだけ傾斜の緩い安定した広い尾根を使いましょう」と言われますが、それでも上部のカーブでは両カットの全切り、下部のカーブでは全盛若しくはそれに近い盛土主体の路体構造となり、流用盛土や残土運搬等、掘削した土砂の移動が多く発生しますので、オペレーターにとっては非常に施工手間のかかる箇所となっています。

設計者にとっては、地山勾配と曲線半径、曲線内縦断勾配に応じて、カーブ起点(B.C)、カーブ中心(O)、カーブ頂点(M.C)、カーブ終点(E.C)のそれぞれの中心杭、勾配杭、切法肩、盛土尻の位置を求めるともに、切土量、盛土量、残土量を計算しなければなりませんし、ヘアピンカーブの支障木伐採に不慣れな伐採者に対しては、詳細な現場指示を行わないと伐りすぎや伐り足らずが発生しやすくなります。そのため、ヘアピンカーブは設計者・伐採者・オペレーター・施工管理者いずれにおいても、作業道開設事業の中の最難関の施工箇所の一つとなっています。そこで、面倒なヘアピンカーブの設計・施工を少しでも容易にするために、切り盛りくんの機能を応用して、図のようなヘアピンカーブのカーブ始点(B.C)、カーブ中心(O)、カーブ終点(E.C)を結んだ断面の様子が一目で判るツールを作成することにしました。

  
図 ヘアピンカーブ断面図 図 ヘアピンカーブ平面図
図 ヘアピンカーブ断面図 図 ヘアピンカーブ平面図


ツール作成にあたっては次の5つの機能を求めました。 @B.C、E.Cの勾配杭、中心杭、切り肩、盛土尻の位置判定が出来ること A両カットの全切りとなる上部の道(E.C)の切り下げ高が判定できること B「切り盛りくん」同様に様々な地山傾斜に対応できること C様々なカーブ半径に対応できること D様々なカーブ内縦断勾配に対応できること

「ヘアピンくん」の構造

「ヘアピンくん」は地山傾斜線が描かれた「地山線カード」と、二枚の透明なシートにB.CとE.Cそれぞれの断面図が描かれた「断面図カード」の計三枚のカードから成ります。これら三枚のカードを重ね合わせて「切り盛りくんのように」地山線と断面図の法線、路盤線等との交点を読み取ることでB.Cの切法肩、盛土尻の位置、E.Cの掘下高、切法肩、勾配杭の位置が判るようになっています。 断面図カードの幅員は3m+両側0.5m拡幅の4m仕様となっていますが、どんな幅員でも作成可能です。

  
写真1

ヘアピンくんの使い方

@設計する曲線半径に応じて断面図カード2のスリットに断面図カード1のピンを差し込む。
A設計するカーブ内平均縦断勾配に応じて、断面図カード2のE.C路盤線を断面図カード1の「B.CとE.Cの路盤高低差目盛り」に合わせる。  この時、地山線カードの左肩に印刷されている早見表を活用すると良い。      
写真2
 
B断面図カード1のスリットに地山線カードのピンを差して重ね合わせる。
C断面図カード1の路盤線スリットの延長線と地山線カードに描かれた地山傾斜角補助線とを合わせる。
D断面図カード1を左右にスライドさせてB.Cにおける切土路体と盛土路体の割合を変える。    
写真3
E地山線と断面図カード1の切法線・盛法線との交点をB.Cの切法肩・盛法尻として読み取る。
F断面図カード2の「センター掘下高」の目盛りと地山線カードとの交点がE.Cの中心杭の位置であり計画路盤までの掘り下げ高さとなる。
G断面図カード2の切法線と地山線カードの交点が両カットの各切法肩の位置となる。
H断面図カード2の路盤線の延長線と地山線カードの交点がE.Cの勾配杭の位置となる。
I各杭、切法肩、盛土尻の位置は地山線カードの数値を読み取り、B.Cの勾配杭からの地山斜面長としてセットする。    
写真4

本ツールに興味を持っていただいた方は、使用方法の解説を掲載しましたのでご覧ください。配布を希望される方はこちらへ。配布は終了しました。